TI  DLP®テクノロジーの活用で、高品質 3D プリンタがより手ごろな価格になり、中小企業の経営者や愛好家の手が届くようになります。

2021 年 8 月 13 日
 

TI DLP テクノロジーの進化により、TI DLP® Pico™ チップセットが縮小して小型アプリケーションに収容できるようになったことで、エンジニアは、より身近で手ごろな価格の小型高品質 3D プリンタを開発することができます。

Mattia Mercante は、熟練した彫刻家ではありません。しかし彼には、17世紀の木彫りにさらなる破損を与えることなく、英国の彫刻家 Grinling Gibbon (グリンリング・ギボンズ) の「The Panel of Cosimo III」に見られる繊細な円形彫刻を復元するための解決策を持っています。

Mattia は現在フリーランスの修復家ですが、それまではイタリアの収蔵機関である貴石博物館で働いていました。Mattia は 3D プリントを活用し、破損した歴史的な美術品の修復を、これまでない精度で製作するパイオニアとして活動してきました。

「この例のように、3D プリントは製品のプロトタイプ製作以外の用途でも役に立ちます。実行不可能だったことを実行可能にする、という大きな影響をもたらします」と、Mattia は語ります。

Mattia の仕事は、光重合ベースの 3D プリントが入手しやすくなったことで、初めて実用化できるようになりました。大半の3D プリンタが一般的に採用しているプラスチック・フィラメント素材とは異なり、光重合方式は高精度制御の UV光を使用し、感光性樹脂の特定の領域を希望する形状で硬化させます。より分解能の高いこの方式により、最終製品でミクロン (μm) 単位の精細さを再現できます。

中国の深圳を拠点とする Anycubic 社は、TI DLP Pico チップセットを使用して手ごろな価格の 3D プリンタを開発した初期参入ベンダーの 1 社です

いくつかの光重合プリンタは移動方式のレーザーを使用して樹脂を点単位で硬化させるのに対し、TI DLP テクノロジーは3D プリント用途で大電力の全面露光 (面単位) を活用しています。その結果、3D プリント時間の短縮と、製造精度の向上を実現することができます。TI DLP テクノロジーは個別制御方式の顕微鏡サイズ・ミラーを数百万個組み合わせた 1 つの配列(デジタル・マイクロミラー・デバイス (DMD))を使用します。3D プリンタで DMD を活用すると、何らかのパターンを樹脂に投射し、1 つの層全体を一度にプリントすることができます。

大きな課題の1 つは高額なコストでした。これが制約となって、高品質 3D プリンタは大規模な生産施設への導入に限定され、Mattia のような小規模工場での入手は事実上不可能でした。ところが、それ以前のバージョンより小型である、TI の新しい DLP Pico チップセットの発表に伴い、高品質 3D プリンタを大幅に小型化することが可能になり、家庭や小規模工場などで設置できるようになりました。その結果、499 ドル未満で入手できるようになりました。これは、従来の DLP 3Dプリンタに比べて半分以下の価格です。中国の深圳を拠点とする Anycubic社は、3D プリンタにこのテクノロジーを導入した初期ベンダーの 1 社であり、Mattia のような芸術家にとってより手ごろな価格を実現しました。

「私は、広い面積の樹脂を一度に硬化させる性能を持つTI の 3D プリンタを本当に気に入っています。机の上に置いておきたいですね。」と、Mattia は語ります。

家庭内での製造を可能に

工業デザイナーである Patrick Vanderpool は、パートナーのために、自分の好みにピッタリな婚約指輪を探していました。そして、指輪を自分自身でデザインし、3D プリント・サービスを活用して指輪の 3D プリントと鋳造を行うことにしました。将来の妻にそのこの試作品を使ってプロポーズをしたので、最終的なデザインには奥様の意見も反映されました。

Patrick Vanderpool は、自分のジュエリービジネスのために、業務用レベルの 3D プリンタに投資したいと考えています

現在、Patrick は自身のジュエリー・デザインビジネスを運営しており、自分の作り出す作品にこの協調の精神を反映させることを目指しています。一方、これまで彼の机の上に設置してあったフィラメント融合型プリンタは、彼のジュエリー作品の大半にとって十分な精細さを再現できるものではありませんでした。そのため彼はこれまで、DLP テクノロジー・ベースの 3D プリントを使用して最終的なモデルを製作する複数の 3D プリント・サービス会社に業務を依頼していました。その間、顧客は自らのアイデアがどのような形になるのか目にするまでに、数日程度の時間がかかっていました。

このテクノロジーのコストが下がれば、彼は独自の業務用3D プリンタを購入することができ、より迅速かつ、より低価格で、量産品質モデルを家庭内で製作することができるようになると考えています。

「自分の頭の中で描いたアイデアがすぐに手に入るのはうれしいことです」と、彼は語ります。「私の目標は、お客様にも開発を体験いただき、お客様にも同じ喜びを味わっていただくことです。」

映画上映から製造現場へ

感光性樹脂にパターンを投射する用途が普及する前、DMD は当初 DLP Cinema® チップを使用してデジタル映像を映画館のスクリーンに投射する用途で使用されていました。このテクノロジーが導入されたのは 1999 年のことで、George Lucasのスター・ウォーズ・エピソード 1をスクリーンに投射しました。

DLP テクノロジーは、数百種類のエレクトロニクス製品、ディスプレイ製品で採用されています

現在までに DLP テクノロジーは進化を遂げており、合計で数百種類のコンシューマ・エレクトロニクス、ディスプレイ製品、車載ライティング、高度な光制御アプリケーションで使用されています。アプリケーションは、高分解能の車載ヘッドライトやヘッド・アップ・ディスプレイから、3D マシン・ビジョン、ARメガネ、高品質 3D プリントまで広い範囲にわたります。

「ハイエンドの映画館用テクノロジーが小型化し、ハンドヘルド・プロジェクタになったのと同様に、TI は産業用 3D プリントで使用しているDLP テクノロジーをより小さなスペースで使用できるようにしました。」と、TI のプロダクトマーケティング・エンジニアである Trevor Dowd は述べています。「つまり、3D プリンタはユーザーのデスク上に収まるサイズでありながら、高性能、高速なプリントスピードを備えることが可能となります。」

このテクノロジーは当初、映画館で Phantom Menace (ファントム・メナス) のライトセーバーを使用した戦闘のクライマックスを映し出すために使用されタ技術が、現在では婚約指輪の 3D プリントや貴重な木彫りの彫刻作品の修復にも活用されるようになっています。これらの事例は、テクノロジーとその用途が時間の経過とともに進化し、新しいイノベーションと市場の開拓に結び付くことを物語っています。

「私たちは、パンデミックの間にも、 3D プリントの世界で魅力的な開発が行なわれているのをされているのを目にしています。フェイス・シールドや人工呼吸器の部品を素早くプリントすることで供給を補うことができました。」と、Trevor は語ります。「より多くの人々がこのようなプリンタを手に入れることで、日々新しい使い方が生まれてくることになるでしょう」

より良い世界を築き上げるための TI の熱意

TI が1987 年に 発表したDMD チップにより、その後の、映画の配給、上映方法に革新が起こりました。その後、プロジェクション (投射) テクノロジーにも変化が生じ、現在では 3D プリントのコスト低下により、より多くの人が利用できるようになっています。これは、半導体を通じてエレクトロニクス製品をより手ごろな価格にすることで、より良い世界を創造するという、TIの熱意を表す 1 つの例です。各世代のイノベーションを通じて、テクノロジーは、小型化、効率化、信頼性を向上し、低コスト化を実現してきました。その結果、新しい市場は開かれ、半導体はあらゆる分野のエレクトロニクス製品に採用されるようになっています。TI はこれらのイノベーションを、エンジニアリングの進歩と捉えています。これが、数十年にわたる TI の事業とその成果です。